とにかくイベントリスクを取らないこと 井上 哲男『相場の潮流』

とにかくイベントリスクを取らないこと 井上 哲男『相場の潮流』

配信日:2016/07/29 08:26 潮流87 とにかくイベントリスクを取らないこと  昨夜の欧米時間は、米国企業の決算発表が“まっただなか”であるのにも関わらず、本日の日銀金融政策決定会合に関するNEWSが次々と飛び込んできては話題となっていた。  日本では急に、今回の会合での「現状維持」を見込む人が増えてきたことを書いたが、昨夜の海外市場の反応を見ると、それでは許されない雰囲気となっており、「現状維持」に傾いていた人の多くが、再度、「再緩和」に見方を変更したと思われる。ちょうど4月の日銀金融政策決定会合前夜と同じ状況である。  そこまで期待感を高めたのは、ロイターの報道。「Japan's MOF has prepared a draft statement in the event of BOJ action」つまり、日銀の金融緩和に合わせて、財務省(政府)もコメント(声明文)を用意しているとの内容であり、言い換えれば、「財政」(経済対策)と「金融緩和」がきちんと両輪となり、日本と言うクルマを前進させる意志を示すということである。  その後に飛び交った報道をまとめると、現在のコンセンサスは「質」、「量」、「金利」の掲げている3点全てで施策を発表するというもの。具体的には、「量」は、国債の買入れ枠拡大、ETF購入枠の拡大(これは株式の需給ひん曲げ要因。これまで年間1兆円を第2弾バズーガで3兆円に増やしているが、これを5兆円に拡大するというような。。。)、「金利」はマイナス金利幅の拡大(-0.1% → -0.2%)などが言われているが、「質」の部分については触れられていない。分からないというのが実情であろう。  しかし、「財務省(政府)がコメント(声明文)を用意」となると、なんらかのヘリコプターマネー的なことが期待感を高める。50年債の発行は一昨日否定して見せたが、(擬似ヘリコプターマネーともいえない代モノではあるが)40年債の発行増額などである。    個人的には、マイナス金利幅の拡大については、昨日書いたように「幻滅感」が伴うと思われるが、新たな刺激策として何かひねり出せと言われると、「質」と「量」の併合が考えられる。  あくまでも個人的にひねり出したもので、何の根拠もないが、このメルマガの配信開始時に書いた潮流のECB施策に似たものが考えられる。それは『TLTRO(テルトロ)』である。四半期毎に金融機関に貸し出し残高(欧州の場合は住宅ローンは除かれる)を提出させ、その増額分について、優遇金利でECBが金融機関に貸し出すというものであるが、まだ、欧州ではこの優遇金利がマイアナスにはなっていない。  これを日本でも行い、その優遇金利をマイナスにするのである。付利の一部に導入されているマイナス金利幅を拡大させることは、先日の三菱UFJ銀行のプライマリー・ディーラー離脱が示すように銀行のアレルギーが大きいが、一方で、このように日銀から銀行への融資にマイナス金利を導入することはウエルカムであろう。繰り返し述べるが、勝手な私見である。  「とにかくイベントリスクを取らないこと」。ドル円のボラティリティーがここ3日間で、リーマンショック以降2番目に高いものとなっているという。このようなときに、為替も株式もイベントリスクを取ること(方向性を指南すること)は投資助言で個人投資家に対して行うことではない。  そのため、本日は会合の内容、市場の反応についてのコメントを配信することはしません。「現状維持」であれば下落することが予想されますが、ドル円のボラが高い以上、「緩和」決定時に、先週来書いている投機筋ポジションの手仕舞いによるドル高、それに呼応した株式の急騰も十分考えられます。(但し、目先筋です)  株も先物もオプションも、いつでも買えるし、売れます。本日はその日ではないと考えます。  続いて、以前書いた、潮流1~3の『TLTRO(テルトロ)』の部分を再掲します。  日欧のアメ(4中旬に配信)  米国の企業決算も本格化するが、イベントとして今週最も注目されるのは、何と言っても21(木)日本時間20:45から開かれる欧州中央銀行(ECB)理事会である。  3/10の同理事会において、月間の資産購入額の引上げ(600億ユーロ→800億ユーロ)、下限金利である中銀預金金利のマイナス幅の拡大(-0.3%→-0.4%)という、事前に予想された緩和策に加えて、政策金利であるリファレンス金利を0.05%からゼロに引き下げ、買い入れ対象についてもユーロ圏内の金融機関以外が発行する投資適格級ユーロ債を追加するという多彩なカードを切り、昨年12月の追加緩和策が結果的に市場の期待を裏切った埋め合わせをした形となったが、私が注目したのは6月から第2弾のTLTRO(テルトロ)を実行するというものである。  これは、もともとの公開市場操作である長期資金供給オペレーション「LTRO」に”T”(ターゲット)、つまり、「目的」を加えたものであり、この「LTRO」は、平たく言うと「資金が必要な銀行は手を挙げて下さい。ジャンジャン資金を貸しますから」ということなのだが、その意義と、いかに欧州の財政不安から生じた国債利回り上昇を封じ込めるのに貢献したかは、いずれの機会で述べることとする。 しかし、この「LTRO」の延長である「第1弾TLTRO」による資金需要が昨年後半から急速に減退し、「もう銀行間で融通し合えるからいいよ」という状態になっているのに「第2弾TLTRO」を講じた背景には、今年2月、株式市場が急落した際に、「ドイツ銀行=ブラックスワン説」が浮上したことを封じ込める意図があったのではないかと考えている。  これだけのパッケージを揃えておきながら、その後の記者会見における発言、「今まで講じた措置が、経済成長やインフレに与える好影響を考えると、さらなる金利の引き下げが必要だとは思わない。望むだけマイナス幅を拡大できるか?--- 答えは『ノー』だ」で、吹き飛ばしてしまい、為替市場でユーロの混乱を招いてしまったドラギ総裁。。。 彼は根が真面目なのだ。だから、2年前のジャクソンホールから一連の施策発表まで、すこぶる真面目に答えすぎて、ドイツやオーストリアの財相の怒りを買ったのである。  彼の発言は間違ってはいない。父親が不肖の息子に、「これ以上、仕送りは増やさない。やっていかれるはずだ」と言っているのと同じである。事実、ユーロ圏における家計部門の資金需要は昨年初から増加し、企業の資金需要も昨年後半から上向きになっている。 それでも、哀しいかな、記者会見における質問は、何か市場を失望させる発言を引き出そうという意図が感じられる。しょうがない。それをうまくかわすことが「市場との対話」なのだ。  日銀がマイナス金利を一部に導入したこともあり、「リーマン・ショック後の先進国の経済成長において、金融緩和は、果たして効果があったのか」という議論が活発化している。日・欧の金融緩和政策が、質(=金利)、量ともに限界に近づいていることは確かである。また、ビールだって1杯目はおいしいが、杯を重ねていくとそうでもなくなるように、追加緩和がもたらす重要なファクターである「市場インパクト」にも、「限界効用低減の法則」があてはめられる。 ( 略 )   今回、日銀がマイナス金利を導入したのは、銀行が日銀に預ける超過預金の一部に対してである。この一部の「付利」がマイナスとなったのであるが、この「付利」を決めたのは、前日銀総裁の白川さんであった。学者や有識者からかなり厳しいことを言われたが、意外にもこの支持に回ったのが、他ならぬECBとFRBであり、日本よりも高い金利を設定したのである。「低金利、ゼロ金利近辺にあるからこそ、足許の金利をプラスにしないと、資金はその流動性を無くしてしまう」というのが白川ドクトリンの主旨であった。  3中央銀行で最も高い付利を設定したECBは、2年前の6月に早ばやとマイナス金利導入を決定し、結果的に、前述のように企業の資金需要を喚起するまでに1年半近くの時間を費やした。  黒田総裁が市場に与えたインパクトや安心感については評価を与えている。しかし、今回のマイナス金利の導入については、まだ、評価を与える時期ではない。
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商号 株式会社ゴゴジャン
金融商品取引業の登録番号 関東財務局長(金商)第1960号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会
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