荒野浩の『テクニカル・ルームから』 全体としては前期も今期も足踏みが続く企業業績
2016/05/22 12:57
特殊要因を除くと景色が変わる
3月期決算発表がほぼ終わりました。前期も今期も全体としては売上高、経常利益ともに伸
び悩み気味の状況が続いています。ただ実態を見ると、特殊要因による落ち込みとその反動の
影響が大きいことが分かります。
前期は資源関連安や中国経済の影響、大手電機メーカーの巨額の損失計上などで商社・鉄鋼
・電機等の業績が悪化したことによる収益悪化で、今期は経常微増益の見通しですが、前期に
落ち込んだ商社・電機の反動増が大きく今期の増益寄与はこの2業種に集中しているといって
も過言ではありません。電機・商社の2業種を除くと、前期は経常増益で、今期は経常減益と
なり、前期減益で、今期増益という足元の数字とは景色が変わります。
今期は円高が企業業績を下押すことになり、円高の悪影響は企業の想定より大きくなる懸念
があります。全体としても増益を確保できるのか予断を許しません。足元では収益性・成長性
ともに足踏み状態であり、ファンダメンタルズ面からは株価を上昇させる力は弱いと考えられ
ます。政策に対する期待や思惑で株価が上昇する場面でも上値にはPER(15倍台が一つ
の目安か)面からの限界があると思われます。
ジリ貧であった15年度決算
15年度決算を四半期ごとに追跡してみると、発表のたびに前年同期比での売上高・経常利益の
伸び率が低下していることが分かります。15年度決算は年度を通して、下方修正サイクルに
入ってしまったことになります。新年度の4~6月期決算も低調な決算が続いていると見込まれま
す。為替相場の動向も絡み、このジリ貧の流れがどこで止まるかが当面の注目点です。
(15年度実績、前年同期比伸び率)
売上高 経常利益
4~ 6月期 +4.9% +24.3%
4~ 9月期 +3.9 +11.1
4~12月期 +2.1 + 5.9
4~ 3月期 +0.5 ▲ 1.3
今期の増益寄与は商社・電機に集中
どの程度の経常増益を確保できるかは微妙
16/3期決算では全産業の経常利益で5,000億円強の減益となりましたが、減益額
が大きかったのは資源安に伴う商社の減損損失1兆円強と巨額のリストラ費用を計上した電機
の9,000億円で説明可能で、この2業種以外では推定で5%台半ばの経常増益でした。逆に
今期はその反動でこの2業種で1.7兆円程度経常利益額が増加する見込みです。
2業種がなければ3%を超える経常減益になる見込みです。
今期は全体としては2%台の経常増益予想となっていますが、円高による業績への悪影響が
十分に織り込まれているかどうかは不確かで、成長しない、売上高が増えない環境下ではどの
程度の増益を確保できるかも未知数です。
4~6月期決算が明らかになる8月上旬までは予想数字に変更はないと思われます。現時点
では下方修正のリスクを念頭に置いた行動が必要だと判断されます。
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