【近藤駿介コラム】脱黒田バズーカ

【近藤駿介コラム】脱黒田バズーカ

        

先週末にかけて今年初の4日続伸を記録した株式市場だったが、週明け以降は一転さえない展開となって来た。

メディアでは、国債市場でマイナス金利が進んで来ていることが取り上げられ、黒田日銀総裁はマイナス金利政策の効果がこれから発揮されると、その宣伝に躍起になっている。

「黒田バズーカ第3弾」として打出した「マイナス金利政策」が、今後どのような影響を及ぼすかは定かではない。ただ、重要なことは、市場は「黒田バズーカ」に対して、短期的に市場を好転させる期待を抱いていたということだ。

「黒田バズーカ」の中長期的な効果に関しては、「異次元の金融緩和」が実施されてから2年10カ月が経過した今でも「2%の物価安定目標」が達成される気配すら見えない上、成長率がマイナスを記録するなど、実体経済にほとんど効果をもたらさないことは共通認識になりつつある。

それでも「黒田バズーカ」に対する期待が残っていたのは、中長期的に意味はなくても、短期的には市場がポジティブな反応を示して来たからだ。市場が短期的といえポジティブな反応することが、もしかしたら「数撃ちゃ当たる」ではないが、いつかは実体経済に好影響が及ぶのではないかという淡い期待を抱かせ続けてきた。

しかし、黒田総裁が「中央銀行史上最強の政策」と自負した「マイナス金利導入」という「黒田バズーカ」を撃ちだした後の市場の反応は、市場の期待を大きく裏切るものだった。

「中央銀行史上最強の政策」に対する短期的な市場の反応がネガティブなものになってしまったことは、僅かに燻り続けていた何時までも効果が現れない「異次元の金融緩和」に対する期待に冷水を浴びさせるものとなった。

「黒田バズーカには効果はない」

今後の市場はこうした「脱黒田バズーカ」に向かって動いていく可能性が高い。年明けに「日銀の金融緩和を織込んで年末2万5000円」などといった恥ずかしい予想を出していた専門家達も軌道修正を余儀なくされることになりそうだ。

こうした状況を受け、安倍政権も「脱黒田バズーカ」に動き出したかのようである。

「政府は8日、安倍晋三首相や経済関係閣僚と国内外の有識者が世界経済の情勢を議論する『国際金融経済分析会合』を16日と17日に開くと発表した。初日となる16日はノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授を招く」(8日付日経電子版「国際金融経済分析会合、16~17日に開催 スティグリッツ氏ら招く」)

2013年9月に消費増税の影響等に関して有識者から意見を聞くために開いた「集中点検会合」の結果が散々だったことで国内の有識者の能力を見限ったのか、政府は今回は海外の有識者の意見も聴くことにしたようだ。

「集中点検会合」では政府主導で「消費増税賛成派」を7割揃えたのに対して、今回の「国際金融経済分析会合」ではトップバッターに消費増税に否定的なスティグリッツ教授を、2番手に「集中点検会合」で消費増税の予定通りの実施に慎重な姿勢を示した岩田元日銀副総裁を抜擢したところが大きな違い。

こうしたメンバー表を作り公開するところに、市場に「消費増税先送り期待」を醸成させようという政府の思惑が透けて見える。

最終的には、安倍総理が財務省の反対をはねのけ「総理の英断」で消費増税先送りにしたという構図を作り「国民生活を救ったヒーロー安倍」を演出することになるのだろうが、それは選挙に最も有効なタイミングまでしまっておかなければならない。

「黒田バズーカ」が「自爆テロ」になる可能性が高まった今、官邸サイドも「自爆テロ」になりかねない「バズーカ期待」よりも、自ら演出出来る「消費増税先送り期待」で市場を支えようという方向に舵を切ったように見える。

市場も政治も「脱黒田バズーカ」に向かう。

「マイナス金利政策導入」という「黒田バズーカ」が「自爆テロ」となってしまった今、市場も政治も「脱黒田バズーカ」に向かうと考えておいた方がよさそうだ。

written by 近藤駿介 

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【近藤駿介 プロフィール/人気ブログ・サイト「BLOGOS」で人気ランキング上位に顔を出すカリスマ・マーケット・ブロガー】 1957年東京生まれ 早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。出向した年にストラテジストとして日経金融新聞(当時)「人気エコノミスト ランキング」にランクインを果たす。野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。その後20年以上に渡り、野村アセットを始め大手資産運用会社、銀行で株式、債券、デリバティブ、ベンチャー投資、不動産関連投資等様々な運用を経験する一方、投資信託業界初のビジネスモデル特許出願も果たす。 現在は、金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナー、ファイナンシャルプランナーなど専門家向けセミナー等も開催中。
商号 株式会社ゴゴジャン
金融商品取引業の登録番号 関東財務局長(金商)第1960号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会
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