規制懸念から長期下落トレンドへ向かうのか
世界的な規制強化への懸念が投資家心理を悪化させ、膠着気味の相場が持ちこたえられずについに崩れました。
BTCは一時1,000,000円を割り込むなど、昨年1年間の上昇を半分近く戻す急激な下落となりました。
■投資家のふるい落とし
これまでの相場の急激な上昇を振り返ると、投資家が過度なレバレッジをかけ取引を行い、価格の裏付けが弱いまま高値で買い上げていくような相場でした。
しかし、ムニューシン財務長官が12日、G20で仮想通貨に関する規制を行いたいと表明すると、16日には中国人民銀行の副総裁が仮想通貨取引に対し引き続き規制を強化する方針であるとロイターが伝えた事で、市場のセンチメントは徐々に悪化。ついに下値メド水準であった1,500,000円を割った事から一気に下落に拍車がかかり、レバレッジ取引のストップロスを巻き込みながら一時は1,000,000円を割り込むなどまるでドミノ倒しのような下落劇でした。
このような背景から、今回の下落では多くの投資家が元本の毀損を被ったと予想されます。全貌は明らかになっていませんが、仮想通貨のシステムの未成熟さ、不完全さを改めて想起させる出来事となりました。これを良い機会として、今後は取引所によるレバレッジ等の自主規制や、投資家保護のスタンスも一層進んでいくものと思われます。
■BTCのドミナンス低下
チャートから今回の下落の衝撃が見て取れるのではないでしょうか。投資家の資力状態もかなり悪化している事が予想され前述の規制以外に材料がない事から、しばらく買いあがる展開は期待できません。BTCは一旦下落すると、しばらく横ばいになってから上昇基調に戻る傾向があるため、上昇気流が発生する季節まではもうしばらく寒い日が続くかもしれません。目先は100万円の攻防を意識した下落トレンドが続きそうだと筆者は考えています。
なお意識したいサポートラインの候補としては、20週移動平均線の1,100,000円付近、指示線を延長した1,000,000円付近、去年相場がオーバーシュート気味になりだした875,000円付近を挙げます。
■ドミナンスに揺り戻しか
BTCを持ちながらマイナーコインを売るアイデアには一定の優位性があると見ています。この相場でも引き続きBTCを持ちたい方は一考の余地ありです。
現在BTCはドミナンスが低下しており、今回の下落劇で少し巻き戻し傾向にあります(アルトコインの下落幅が大きいため)。そもそも下落などで取引所などのリスク(システミックリスクと言う)が意識され出すと、規制と投資家保護が先行して検討されているBTCの方が社会的な適応性が高いため、アルトコインからBTCに資金が戻ると考えられます。
まだまだ決済手段として未整備な仮想通貨市場でBTCがこれだけのシェアしかない事は不可解に感じます。今はテーマでマイナーコインへの資金流出が進んでいますが、BTCの穴埋めに役立てるために設計されたアルトコインが本当の脚光を浴びるのは、BTCが決済手段として確立されてからでも遅くないはずです。
■G20で仮想通貨が議題に
2018年のG20では仮想通貨が議題に上がるとの憶測がマーケットでは徐々に意識され始めています。これは規制を目的としたもので、取引・マイニング・決済などあらゆる分野を包括的に議論する可能性が高いでしょう。
しかし規制といっても必ずしも投資家を締め出すものではありません。むしろ引き締めを強くすると、BTCの本来の特徴である非中央集権性がかえって損なわれる事から、資金流出や違法取引の可能性が高まります。これは現代の経済においてはもはや避けられないパターンであるため、このあたりのさじ加減が首脳陣にとっては悩みの種となっています。
例えば仮想通貨取引を特定の手段に限定し、取引所に情報開示を義務化してしまうと、先進国の管轄外での取引が主流になってしまいそれこそ仮想通貨はマネーロンダリングの温床にもなってしまいかねません。仮想通貨取引に積極的な新興国群は想像以上にありますのでタックスヘイブンの様に規制を掻い潜る事は可能です。このためG20で話し合うといっても、締め付けについてそれほど心配する必要は無いのではないでしょうか。
G20で議題に上がるまで仮想通貨が成熟した事を受け、一つの歴史的節目を突破したと解釈する方が妥当なのではないかと、筆者は思います。
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【執筆者】
河田 西欧(カワダ サイオウ)
トレイダーズ証券市場部ディーリング課
スイス・ジュネーブ生まれ。慶應義塾大学卒。
世界各国を旅した経験から実体験に根ざしたファンメンタルズ分析は説得力がある。
学生時に学んだ行動経済学を活かし、市場参加者の心理的バイアスを理論的に分析しトレードに活かす。
趣味は将棋でアマ高段者の腕前。中盤の駆け引きは相場の次の一手を読む時にも活かしている。
「大衆は常に間違っている」が信条。
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