上昇の背後にレバレッジ取引の影
今週の東京は涼しかったですね。
しかしBTCは最高気温更新。暑いです。
前回は450,000円付近の攻防を予想しましたが、蓋をあけてみれば一気にBTCは500,000円付近に到達。利益確定の売りに押された事でやや値段を戻し、8月18日現在470,000円付近を推移しています。
■価格上昇が加速している
8月18日現在のBTC/JPYのチャートになります(テクニカルは7日、50日移動平均線とボリンジャーバンド20日、2σ)。
年初からの上昇トレンドを振り返ると毎回角度が上がっています。価格変動が乗数的に荒くなり過去の経験則にとらわれずに価格が推移。常に想像を超えた展開となりやはり上値メドは読むのが難しいです。
このような相場ではテクニカルがあまり機能しないのが特徴です。下値メドとしては7日移動平均線やボリンジャーバンドの1σがワークしそうですがあまり頼りありません。
■なぜ価格が荒くなるのか
日本勢のBTC取引高が世界で1位になりました。これは証拠金取引を含めた取引量ですが、現物取引でも日本勢は2位です。証拠金取引単体で見れば、大半が日本勢によるものでしょう。
図の2番目の矢印に示されている4月から5月にかけての上昇期には、日本の個人投資家がBTC取引へ流入し相場を牽引したとの見方が強いです。また家電量販店や大手EC会社でもビットコインの取り扱いを開始した事が、BTC現物への需要を高めました。この期間では古参の取引参加者の一部を除けばそれほどまで証拠金取引は盛んではなかったと思います。むしろ新参投資家の現物保有が価格を牽引したと筆者は見ています。
しかしこの期間は結果的にBTC史上最大の大相場となり、上がり始めに投資を行った投資家は実に2か月で100%の利回りを手にした事になります。
さて、この期間手ごたえを感じた投資家は次にどのような行動を取るでしょうか。おそらくレバレッジをかけてさらなる上昇に賭けるでしょう。それが、現在の価格上昇幅を増大させている原因だと筆者は考えています。
最初の体験が後の意思決定を偏らせる性質はアンカリングと呼ばれ、人間の心理的バイアスの代表的なものです。この期間に参入した多くの投資家にとって「上昇は2か月くらい続く」「上昇は3倍まで続く」「システム懸念(ハードフォーク)からしか価格は下落しない」などといった判断基準が過度に認識されている可能性があります。
これは価格に数学的根拠を見いだせないBTC相場においてはなおさら説得力を持ちそうなので、新規参入勢が過度なレバレッジをかけて投資を行い価格上昇の角度を上げたと見れば今週の値動きが急だったのも腑に落ちます。
■需給分析はストップロスで動く
しかしレバレッジが高くなれば下落するタイミングも早くその幅も大きいため、過去の経験則から価格を想定するのは極めて難しいです。
このようにレートが経験則通りにいかない時は、テクニカルやファンダメンタルズに頼らず需給分析を行うのがおすすめです。
ファンダメンタルズ、テクニカルと違い、需給分析は普遍的な根拠を持ちません。ここで買いたい人、ここで売りたい人が有象無象に混ざって戦っている状況を想像するのが需給分析になります。これは為替でいう実需取引とは異なりますのでご留意ください。
さて細かいポイントを取り上げればいくらでも分析はできてしまうのですが、この需給分析において大事なのは「どこで買った人が一番ストップロス(損切り)に近いか」という視点です。なぜならストップロスでは資金不足や取引ルールから相場の趨勢を問わず機械的に行わなければならない取引であり、そのような瞬間に価格のバランス(需給)が一気に崩れ相場が大きく動くからです。
綱引きで拮抗している時に参加者の1人が足をつったらどうなるでしょう。それが小さな力であっても試合が傾いてしまうのとまったく一緒です。
今の相場であれば、8月15日、8月17日の473,000円以上の価格帯で買ってしまった人が投げ売りのターゲット、460,000円以下の価格帯で売ってしまった人がショートカバーのターゲットになります。
例えばBTCの現物価格が500,000円を超えれば含み損は1BTCあたり40,000円となることから、売ってしまった人たちの損切りが出て価格が一気に上がるだろうと予測できます。買い方の投げ売りラインは、450,000円くらいでしょうか。
■今週の展望
上記の背景から500,000円のカベを壊せばショートカバーと新規参入から550,000-600,000円を目指す展開、450,000円を一度下回れば350,000円付近まで一気に下落するトレンドが生じると考えています。
筆者なら両壁に逆指値を入れるか、買いオンリーなら400,000円台と300,000円台後半に半分ずつ指値を入れておきたいところです。
BTCはリスクの高い投資対象です。投資の判断は自己責任で行いましょう。
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【執筆者】
河田 西欧(カワダ サイオウ)
トレイダーズ証券市場部ディーリング課
スイス・ジュネーブ生まれ。慶應義塾大学卒。
世界各国を旅した経験から実体験に根ざしたファンメンタルズ分析は説得力がある。
学生時に学んだ行動経済学を活かし、市場参加者の心理的バイアスを理論的に分析しトレードに活かす。
趣味は将棋でアマ高段者の腕前。中盤の駆け引きは相場の次の一手を読む時にも活かしている。
「大衆は常に間違っている」が信条。
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