「資金管理」の重要性~「運用資金100万円で 5銘柄」と「運用資金1000万円で50銘柄」の違いー日本株システムトレード基礎講座⑥
「資金管理」の重要性~
「運用資金 100 万円で 5 銘柄」と「運用資金 1000 万円で 50 銘柄」の違い
証券アナリストで、システムトレードに関するセミナー講師を担当しています、フェアトレー
ド株式会社の西村剛(にしむらつよし)です。本講座では、ご覧頂いた皆さまが基礎から「シス
テムトレード」を理解できるように、やさしい言葉とやさしい表現で解説していきます。ぜひ、
最後までお付き合い頂ければと思います。今回のテーマは「資金管理」の重要性~「運用資金 100
万円で 5 銘柄」と「運用資金 1000 万円で 50 銘柄」の違い、です。では、中身に入りましょ
う。
数回に渡り別のテーマの講座では、ブレイクアウト手法をサンプルにしたバックテストの結果
を行いました。それをご覧になって、どのような感想をもたれたでしょうか?通説となっている
投資手法でも、バックテストという形で検証を行っているのと、いないのでは、実際にご自身の
資金を使って運用する際の安心感はまったく違うものです。
例えば、一般的にカリスマトレーダーといわれる人の投資法を実際に過去数十年のデータで検
証してみると、「思ったほど使えない方法だった」ということはシステムトレードの世界ではよく
ある話なのです。システムトレードが、一般に普及することで、実はこのように、曖昧な投資情
報が淘汰されていくことは、多くの投資家(トレーダー)にとってプラスになるのではないでし
ょうか。
では、ここから本題に入ります。
テーマは「資金管理(マネーマネジメント)」の重要性につい
てです。
ひとくちに「資金管理」といっても、その意味は様々です。今回だけで全てを解説する
のは難しいので、今回は中身を絞ります。「銘柄(資金)の分散方法がパフォーマンスにあたえる
影響」に焦点を当てて、解説をすすめていきたいと思います。
これまで、数回登場したブレイクアウトの売買ルールと検証結果をご覧ください。
(※売買ルールは前回と同じですが、テストを実施した期間が異なるため、検証結果は若干異なります。)
┌───────────────────────────────┐
[買いルール]
・過去 250 日間の高値(終値で一番高い価格)を更新
[売りルール]
・過去 125 日間の安値(終値で一番安い価格)を更新
※売買は翌日の寄付き(始値)で行う
└───────────────────────────────┘
┌───────────────────────────────┐
[検証結果] (テスト期間:2000/1/1~2008/6/30)
勝率:41.2%
平均損益率:+11.13%
平均保有日数:324.8 日
└───────────────────────────────┘
上記の検証結果は、平均損益率が約+11%と大幅にプラスであることから、長期的には有効な
売買ルールであると言えます。しかし、この検証結果には致命的な欠点があります。
検証結果では、あくまでも売買ルールに従ってすべてのトレードを てすべてのトレードを行ったことを前提としてい
ます。しかしながら、現実のトレードでは、よほどの億万長者でもない限り、売買ルールに該当するすべての銘柄をトレードすることは不可能です。
例えば、買いのルールに該当する銘柄が
100 銘柄もあった場合、その全てを買い付けるためには何千万円もの資金が必要になります。
以上のことから、より現実的な検証を行うのであれば、自分の持っている「運用資金の量(金額)」を考慮したバックテストを行う必要があります。
そこで、今回は実際に 2 つの資金量を考慮したパターンについて、バックテストを行った結果をお見せしていきます。以下の2つの検証結果は、先ほどと全く同じ 250 日間のブレイクアウ
ト手法の検証結果です。
先ほどと異なるのは「運用資金の量」を想定した検証を行っている点です。
■運用資金 100 万円で 5 銘柄に分散した場合の検証結果
■運用資金 1000 万円で 50 銘柄に分散した場合の検証結果
少々補足します。
運用資金 100 万円で5銘柄に分散する場合、買いのルールに該当する銘柄がたとえ 10 銘柄
あったとしても、そのうちの 5 銘柄までしか買えないことになります。(もちろん、売った後に
資金ができればその分は追加で買えます)また、実際に買いを行う際には、買い付けるための優
先順位が必要となりますが、今回に関しては「当日の売買代金が多い順(流動性が高い順)」とし
ます。
■運用資金 100 万円で 5 銘柄に分散した場合の検証結果
(テスト期間:2000/1/1~2008/6/30)
┌───────────────────────────────┐
勝率:41.3%
平均損益率:+6.55%
平均保有日数:177.85 日
└───────────────────────────────┘
■運用資金 1000 万円で 50 銘柄に分散した場合の検証結果
(テスト期間:2000/1/1~2008/6/30)
┌───────────────────────────────┐
勝率:41.3%
平均損益率:+7.67%
平均保有日数:172.55 日
└───────────────────────────────┘
いかがでしょうか?平均で約+11%の利益となっていたブレイクアウト手法ですが、資金量の制限を加えると大きく成績が変わってくることがわかると わってくることがわかると思います。
基本的には、分散する銘柄数が少ないほど成績のブレが大きくなり、より多くの銘柄に分散す
るほどすべての銘柄を売買した場合の結果に近づく(平均に近づく)ことになると考えていいで
しょう。このように、全く同じ投資手法を使ってトレードしてもってトレードしても、「どのように分散してトレード
するか」という違いだけでパフォーマンスに大きな違いがでてきます。
同じようなルールで売買していても、人それぞれでトレード成績が大きく異なるのは、今回のような資金の分散方法を含めた資金管理の違いによるところが大きいと考えられます。実は、ト レードで利益をあげるためには最強の投資手法などは必要なく、「ほどほどに有効性のある売買ルール」と「正しい資金管理」があれば十分なのです!
よろしいですか?